国内の大学研究で、ヒト臍帯血から樹立された新規の制御性T細胞(HOZOT細胞)をご存知の方も多いと思います。このHOZOT細胞に関しては、現在もなお研究が進んでいますが、主にがん細胞へ選択的に侵入する機能を有していることが注目されました。侵入したHOZOT細胞は、死滅する際にがん細胞を殺す働きのある物質を放ち、がん細胞を道連れに死滅させる特徴を持つため、これまで発見されている他の免疫システムとは大きく異なる免疫機構であると考えられています。
試験管実験で判明している効果だけでも、HOZOT細胞を注入した場合、免疫反応を活性化させる細胞の増殖が約10分の一に激減することが確認され、ヒトの大腸がん細胞の91%をも破壊する結果が出ています。また、炎症を抑える効果を持つ物質IL−10(インターロイキン―10)を作る能力も高いとのことですので、特定のガン治療やガン予防療法への応用も期待されています。
このように、臍帯血には特徴的な免疫システムが兼ね備わっていることが少しずつ明らかになっているのですが、臍帯もまた同様に非常に神秘的な免疫システムの数々が存在していると考えられています。
サイトカイン・エクソソームなど、現在の研究で徐々に解明されている作用・効果は数多くありますが、まだまだ未知の可能性をたくさん秘めている「臍帯」。今後の研究にもまだまだ目が離せません。