「幹細胞培養上清液」を利用した治療
再生医療分野においては、「幹細胞」を用いた細胞移植治療が注目されておりますが、患者様にとって非侵襲的・低リスクである新たな治療法の一つとして「幹細胞培養上清液」を利用した治療が非常に注目され、その需要も急激に増加しています。
医療機関にとっても、第一種・第二種・第三種の再生医療申請や認可を得る必要もないばかりでなく、既存の設備のままで再生医療を導入できるため初期コストも大幅に抑えることができるのです。
もちろん、患者様にとっても組織を採取する必要はありません。そのため、患者様の負担なく大きな効果を得ることができることが大きなメリットと言えるでしょう。
現在、幹細胞培養上清液は培養もととなる組織により、脂肪由来・歯髄由来・臍帯由来・骨髄由来などに分かれます。
同じヒトから採取する細胞からとはいえ、その部位・組織によりサイトカイン量の差異や、パラクライン効果の出やすさなどに差が存在することがわかっています。
以下、脂肪由来・歯髄由来・臍帯由来の培養上清液に関して、その特徴を簡単にご紹介致します。
脂肪由来
脂肪組織中に含まれる体性幹細胞を利用しています。
多くは部分的な脂肪除去、脂肪吸引によって抽出された脂肪を使用しますが、その採取の方法の違いによっては、細胞損傷が激しく出てしまうことがあります。
そのため、安全かつ明確な基準のもと採取される脂肪細胞を原料とした上清液を確保することが大切と考えられています。
海外産の脂肪由来培養上清液では、採取されるヒトの人種や居住地域、感染症の有無が明確でない例もあると考えられているので、ご利用の際にはドナーの感染症有無や安全性に関する諸条件を事前に確認されることをおすすめします。
一方、日本国内で採取・培養されている培養上清液に関しては、品質管理含めドナー管理に関しても厳格に管理されていることが一般的であるため、医療機関としても安心してご利用いただけるのではないかと考えられます。
歯髄由来
ヒトの歯の中心にある神経部分(歯髄細胞)から採取した幹細胞の培養上清液です。
乳児から老人まで幅広い年齢層のヒトから採取できますが、もちろん若年層から採取した歯髄細胞のほうが成長因子を含むため、幹細胞培養上清液として使用する際には乳児の歯(乳歯)を使用することが一般的です。
臍帯由来
臍帯由来幹細胞は、赤ちゃんと母体をつなぐ臍帯から採取した幹細胞です。
この部分には成長因子に富んだ若い細胞が非常に多く含まれるため、臍帯由来幹細胞上清液も他組織由来の培養上清液より、期待される効果や含有するサイトカイン量は格段に違いがあることが特徴です。
母体で卵子から幾重となく細胞分裂を重ね、赤ちゃんを育て上げる力をもつエネルギーは臍帯を介してやりとりされます。
つまり、細胞の再生力や各組織・細胞間の調整に関して、非常に高いバランス力と絶妙な再生能力をもちあわせることになるため、培養上清液成分に関してもパラクライン効果を最大限に活かせる力を持ち合わせるものが、臍帯由来培養上清液であると言えるでしょう。